最も多いアルツハイマー型の症状と進行
いくつかある認知症の中で最も患者数が多いアルツハイマー型認知症について詳しくみていきましょう。特徴や症状、対応方法などを詳しく解説していきます。
主な症状
認知症ということで物忘れなどの記憶障害が主な症状であると思われていますが、「時間、場所、人物の認識がうまくできなくなる(見当識障害)」「計画を立てて順番通りにこなすことができなくなる(実行機能障害)」「洋服の着方や道具の使い方など一連の動作が分からなくなる(失行)」「計算や言葉などの能力低下」といった症状もあります。ただし、これらの症状はアルツハイマー型認知症に限らず認知症を持つ人に多く現れる症状でもあります。また、人によって症状の出方には差があり、症状がすべて一律で出現するわけではありません。
初期の症状
まずは認知症の症状として一般的な「物忘れ」。記憶をつかさどる海馬が損傷されるため物忘れを発症してしまうわけですが、「最近のことをよく忘れる」「全部忘れている」といった加齢による物忘れとは異なる特徴があります。たとえば待ち合わせの約束をしていたとしましょう。加齢による物忘れだと「待ち合わせ場所を忘れる」といったように一部を忘れてしまうわけですがアルツハイマー型認知症の場合は「待ち合わせしたことを覚えていない」と約束そのものを忘れてしまいます。また、「時間の見当識障害」や「実行機能障害」といった症状も目立つようになります。
中期の症状
中期になると「場所の見当識障害」や「失行」といった症状が目立つようになります。
「場所の見当識障害」でよくみられるのが、「馴染みの場所でも道に迷うようになるため、近所でも自宅に帰れず警察に保護される」といった徘徊です。ご家族も気が抜けない場面が増えてくるため、介護が大変になってきます。
また、「失行」では「洋服の着脱の仕方」「お金の払い方」「トイレの仕方」など日常生活上の簡単な動作ができなくなります。サポートを必要とする場面も増えてくるわけですが、これまでできていたことができなくなることを周囲から責められて自信を失ったり自尊心を傷つけられたりするようになります。しかし、言語能力も低下しているため、はっきりと気持ちを言葉で伝えられず、無気力や抑うつ、暴言など二次的な症状を発症することもあります。
後期の症状
言葉が失われて会話が困難になったり、身体の基礎的な能力が衰えたりと生活していく上で介護が必要になります。しかし、身体機能が衰えただけであって感情を失ったわけではありません。喜怒哀楽の感情を持っているため、本人の気持ちを尊重した対応を心がけることが大切です。
アルツハイマー型認知症の場合、5年~10年ほどでこのような経過をたどることが多いのですが、個人差が非常に大きいため適切な支援があればより良い状態を保つことは可能です。